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国際伝統医学センター

研究室だより

伝統医学へのとびら−研究室だより
2003 年 09 月 02 日 号
『冬虫夏草菌糸体エキス飲料摂取による運動時の交感神経活動』
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冬虫夏草菌糸体エキスの摂取の効果は,滋養強壮,鎮静作用,など多岐にわたります。さらに動物実験からは,持久力の増加,抗ストレス作用,肝臓内ATP量および血流量の増加作用,血糖値低下作用,酸化的リン酸化の促進などが報告されています。
冬虫夏草菌糸体エキスとアントシアニンを配合した飲料を摂取して,その効果を自律神経系バランスの面から調べることとしました。この配合飲料(ACT)とプラセボ飲料(CON)摂取のグループを作り,中高年者を対象として1ヶ月間連続摂取して効果の比較・検討を行いました。
中高年者63名(男性21名,女性42名平均年齢59.1歳)を被験者として選びました。その効果判定のために飲料摂取前後に,自転車エルゴメータを使った運動負荷実験を行いました。自律神経系の測定評価項目は,心電図RR間隔変動,回復後に尿を採取しました。自転車回転運動は安静2分間の後,ウォーミングアップ1分間,男女別体重別に一定負荷をかけて7分間,クールダウン2分間,回復5分間の計17分間行いました。心電図RR間隔変動のスペクトル分析により,低周波数帯域と高周波数帯域のパワー密度別に2分類して,交感神経系の活動指標はLF/HFから,副交感神経系の活動指標はHFから評価しました。
交感神経系の活動指標となるLF/HF比を,運動中についてみると,ACT群が摂取前の平均9.6%から,摂取後の13.1%と上昇しました。他方,CON群は摂取前が平均6.1%,摂取後が7.1%と僅かな上昇しかみられませんでした。このデータから観て,冬虫夏草菌糸体エキス飲料の摂取によって,交感神経系活動が促進され,自転車回転運動がやり易くなったことがわかります。そしてACT群の運動終了後の交感神経系活動は,CON群よりも急速に鎮静化されていきました。
また尿成分からACT群のカテコールアミン三分画(アドレナリン,ノルアドレナリン,ドーパミン)の値を見ると,摂取前よりも摂取後に有意な減少を示しました(p<0.05)。ドーパミン値をみても,摂取前の平均729.3(μg/l)から摂取後530.6(μg/l)と有意に低下しました(p<0.05)。

このような結果から,中高年者が1ヶ月間,冬虫夏草菌糸体エキスとアントシアニン配合飲料を摂取することは,運動中の交感神経系活動を促進させることが判明しました。心拍変動スペクトルのLF/HF比の上昇,運動直後の白血球の減少,回復時の尿中カテコールアミン三分画の減少などからみて,運動時の交感神経系活動の促進が顕著でした。
これらの結果から,ACT群は運動直後から回復後までの間,交感神経系活動(LF/HF)が抑制され,副交感神経系活動(HF/TF×100)が活発に働いたことが示唆されます。
以上の結果から自律神経系の働きを考察すると,本飲料の摂取によって安静・回復時には,リラックス状態が現れやすくなるようです。一方,運動を開始すると,交感神経の反応が早く活発に働き,運動しやすい状態になると考えられます。本飲料は運動時の自律神経バランスを改善させ,交感神経系活動を促進させたようです。そして運動終了後になると自律神経バランスの変更,交感神経系活動の抑制がみられました。
本研究は,平成14年度の地域先導研究成果の一部です。

(田島 多恵子)

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