富山県国際伝統医学センターがチベットで購入した四部医典タンカは、全80編がそろっており、完全な セットとして保有されているのは、世界でもイギリスの大英博物館ほか数多くありません。 四部医典タンカとは、チベット医薬学の基本的内容、人体の解剖学的構造と生理機能、疾病の病因・病理・ 症状、疾病の診断方法と治療原則、薬物の種類・性味・用法、飲食、起居、衛生保健の知識、医療者の道徳と 心得などを系統的に描写したものです。 これほど膨大な絵画により系統的に医薬衛生、科学理論、実践技術を紹介した作品は、世界の医薬学の歴史 においてもほとんど類を見ないと言われております。 以下、タンカの解説は『四部医典タンカ』に極めて造詣の深い池上正治氏によるものです。 タンカとは? タンカとは、チベットの寺院にある絵のことです。タンカに描かれるのは、仏像あり、物語あり、風景ありです。 それは文字を解さない人たちに、絵をもって仏教を図解したものです。
チベット医学とともにあるタンカは、17世紀あたりから組織的に描かれるようになります。その内容と点数は時代と ともに完備され、20世紀の後半には、計80枚のセットとなり、『四部医典(しぶいてん)タンカ全集』と呼ばれるようになりました。 『四部医典』とは? チベットの医薬学タンカが図解したのは、じつは『四部医典』の内容です。『四部医典』こそは、チベット医学の 聖典であり、チベット語では『ギュー・シ』です。ギューは「聖典」、シは「四」のことです。 まだ日本語訳のない『四部医典』ですが、その内容は、 第一部 根本(こんぽん)タントラ 計6章 第二部 論説(ろんせつ)タントラ 計31章 第三部 秘訣(ひけつ)タントラ 計92章 第四部 結尾(けつび)タントラ 計27章 となっており、タントラは「本集」ないし「聖典」を意味するチベット語です。さて、この『ギュー・シ』ですが、チベットでは、医聖ユトクにより編述された後、地中に埋められ、数百年後に掘りだされた・・・と信じられ、神秘のベールに包まれています。 |