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平成22年度 第2回 健康医学講演会 11月


介護予防のための運動と生活習慣

とやま健康パーク 泉 一郎
事業推進課係長
健康運動指導士、博士(医学)


 介護予防とは、寝たきりなど介護が必要な状態にならないように、心身の衰えを予防・回復する取組みをいいます。

1 介護が必要となる原因
 そのためには生活習慣が大切です。寝たきりなど介護が必要となる原因としては、脳卒中などの生活習慣病のほかに、高齢による衰弱や転倒・骨折、認知症などがあります。これらは「老年症候群」と呼ばれている老化現象です。生活習慣病同様に毎日の生活習慣で予防や改善はある程度可能です。「衰弱の悪循環」におちいらないためには、頭もからだも積極的に動かすことが大切です。常に動かすことが老化を防ぐことになります。
 「義歯(入れ歯)の不調」、「ひざの痛み」など虚弱の悪循環のきっかけになりそうなことを「ささいなこと」と放置しないことです。 病気やけがを予防し、もしかかったときはなおりしだい身体機能の回復をはかるようにします。

2 健康維持に重要な要素
 健康維持に重要な要素として、からだを維持する「たんぱく質」と活動するための「エネルギー」の2つがありますが、この2つが不足した状態を「低栄養」と言います。高齢期には低栄養予防のために、「たんぱく質」と「エネルギー」になる食品を意識してとる必要があります。
 「口腔機能向上」も大切です。歯と口腔の健康を守ることは、全身の健康に関係します。歯がしっかりしているかどうかは、栄養がきちんと摂れるか、からだを動かすときに歯を食いしばれるかなどに関係します。また口腔内に細菌が繁殖すると、口内炎になったり、気道感染・肺炎を招いたりすることがあります。
 「閉じこもり」予防も大切ですね。特に高齢期では、からだを動かさないとどんどん衰えてしまいます。「家が一番」とばかりに家にこもってばかりいると、使わない足腰の筋力は衰え、食欲も低下し、気がつかないうちに衰弱してしまいます。また、家の中だけの刺激だと、しだいに脳も衰え、認知症を招きやすくなってしまいます。

3 自立した生活を送るため
 長生きしていても身の回りのことは人まかせで、人とも会わず、ほとんど外出しないで家に閉じこもっているのではしかたありません。年齢を重ねても、心身ともに元気で、自立した日常生活が送れることが大切です。そのためには日々の運動が必要になります。ストレッチングは、体の筋肉を十分に伸ばし、関節の可動域を広げる運動です。体全体が柔らかくなり、体の動きがスムーズになるので転倒予防にもなります。肋間筋や腹筋なども鍛えられるので呼吸機能を高めてくれます。
 バランス運動は、バランス神経と筋肉の働きを高めて平衡感覚を養う運動です。平衡機能は老化によって低下しやすいので、この運動をすることによってふらつきや転倒を予防することができます。筋肉づくり運動(レジスタンス運動)は、衰えはじめた筋肉を再びつくり直すため、少しずつ、ゆっくりと筋収縮の刺激を与えていく運動です。
 高齢者に必要な体力は、階段を昇る、バスや電車に乗るといった場面で自分の体重を自由に動かす筋力(体重支持筋力)です。腰から下肢の抗重力筋を強化することが重要です。移動する能力が失われている症候はロコモティブシンドロームと呼ばれ、その予防に運動が欠かせません。ウォーキングは、生活習慣病やメタボリックシンドロームの危険因子の予防・改善に大きく貢献します。また、脚筋力の強化、敏捷性、バランス感覚なども養うことができます。





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