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平成22年度 健康講話 8月


がん予防と生活習慣 ~検診と日々の暮らしでがん予防~

富山県健康増進センター所長 大江 浩
医師




○まずは、がんの現状を知ること
 国立がんセンターがん対策情報センター推計値(平成15年)では、がんの生涯リスクは男性54%、女性41%とされ、がんはありふれた病気の一つです。富山県がん疫学事業調査では一年間にがんに罹る方は男性3441人、女性2674人です(富山県がん疫学事業調査報告書平成19年概数)。但し、一口にがんといっても様々な種類があります。国立がんセンターがん対策情報センターの罹患推計では、男性では胃がんが最も多く、次いで大腸がん、肺がんの順で、これらの全体の過半数を占めます。女性では乳がんが最も多く、次いで大腸がん、胃がん、肺がん、子宮がんの順で、これらで全体の6割以上を占めています。一方、人口動態統計による部位別がん死亡数では、男性では肺がん、女性では大腸がんが最も多い状況です。なお、平成20年のがん年齢調整死亡率(75歳未満)では、富山県は胃がん死亡率が全国ワースト1位、乳がん死亡率が全国ワースト3位(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/12/dl/s1202-10j.pdf)となっています。

○がんの一次予防 “がんに罹らない”
 国立がんセンターによる「がんを防ぐための12カ条」は、疫学的に証明されているがん予防法です。がん予防はメタボリックシンドローム予防にも通じますので、毎日の生活の中で継続することが大切です。
 ①バランスのとれた栄養をとる
 ②毎日、変化のある食生活を
 ③食べすぎを避け、脂肪は控えめに
 ④お酒はほどほどに
 ⑤たばこは吸わないように
 ⑥食べ物から適量のビタミンと繊維質のものを多くとる
 ⑦塩辛いものは少なめに、あまり熱いものはさましてから
 ⑧焦げた部分は避ける
 ⑨かびの生えたものに注意
 ⑩日光に当たりすぎない
 ⑪適度にスポーツをする
 ⑫体を清潔に

○がんの二次予防 “がんの早期発見・治療”
 日本対がん協会が制定した「がんの危険信号8ヶ条」があります。例えば、胃がん「胃の具合が悪く、食欲がなく、好みが変わったりしないか」、乳がん「乳房の中にシコリはないか」、肺がん「咳が続いたり、痰に血が混じったりしないか」などです。しかし、症状が出てからでは、既に進行している場合が少なくありません。全国がんセンター協議会加盟施設生存率協同調査をみても、早期に発見される各がんの5年生存率が高いことが明らかになっていますが、早期発見のためには、がん検診が欠かせません。がん検診は、①数が多く死亡の重大原因、②安全で精度が高い検査方法、治療法があり、死亡減少につながる、③メリットがデメリットを上回る(経済性含む)、5種類(胃、大腸、肺、乳、子宮)について実施されています。しかし、内閣府の世論調査においても、市町村におけるがん検診の状況をみても、各種がん検診の受診率は2~3割台に留まっています。平成19年度に策定された国のがん対策推進基本計画、県のがん対策推進計画では「5年以内にがん検診受診率50%以上を目指す」とされており、積極的な受診率向上策が期待されます。また、受診率だけではなく、精度管理の徹底が必要で、厚労省委員会の許容値(要精検率、がん発見率、精検受診率等)を満たすがん検診を推進しなければなりません。
 さて、平成21年度から、女性特有のがん検診推進事業として、節目年齢の女性(子宮頸がんは20~40歳、乳がんは40~60歳の5歳毎)に対して、市町村から無料クーポン券と検診手帳が配布されています。子宮頸がんのピークは30代で若い女性に増加していること、乳がんのピークは40代にあり、女性で最も罹るがんになっていますので、ぜひ受診してほしいと思います。

 富山県健康増進センターからの乳がん検診車と子宮がん検診車は、セットで配車、運転手・受付・放射線技師はすべて女性で、休日配車も各市町村で実施しています。増進センターの施設では毎週金曜日はレディースデイ(女性の受診者のみ)ですので、ご利用ください。
 例年9月は「がん征圧月間」、10月は「がん検診受診率50%達成に向けた集中キャンペーン月間」です。自分のためだけではなく、愛する家族のためにもがん検診を受診していただきたいと思います。
 がん検診には「安心」が入っています(GANKENSHIN)。





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